焼け木杭に火はつくか?
「何が、おかしいよ?」

訝しがる夏海と良太郎に、聡の眉間に皺が寄った。説明しやがれ。その顔にはそんな文字が浮かんでいた。

「だって、英吾。サトルくんに言ったんでしょ? 長谷さんのこと『夏海さんのパン嫌いの原因になった元カレ』って。秋穂がどっかで長谷さんと夏海さんのこと見て、夏海さんの恋人だと知ったとしても、別れた理由までは判らないでしょ? 夏海さん、話してないでしょ? 長谷さんが、秋穂にそんなこと話すかなあ?」

そういうことかと、鼻を鳴らすようにして頷いた聡は、外を見て笑った。

「良太郎。おメー、呼んだろ、アレ」

鍵のかかったドアの前で、中に向かって懸命に手を振っている人影があった。

「三人で首捻ったって判らねーよ、そりゃ。本人に聞くべ」

そう言って、聡は時間外の来客を招き入れた。
< 161 / 202 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop