紺碧の海 金色の砂漠
はっきり言って、さっぱりわからない。

結婚前とは違い、ドレスアップするのはとても楽しい。特に、ミシュアル国王が絶賛するので、彼の為に着飾りたいと思う。

いつもなら相談するシャムスもいない。だがこの場合、シャムスも「どう致しましょう」と言い出す気もする。

いっそ、ティナに相談してきてもいいだろうか、と舞が尋ねようとしたとき、ミシュアル国王の憮然たる様子に気が付いた。


「ねぇアル、どうしたの? 私が晩餐会に出るのが不満? だったら辞退するけど」

「そうではない。正妃たるお前に、同じドレスを二度着せるなど……。新しいドレスを用意しておくべきだった」


深刻そうに口にするが、何がそんなに問題なのだろう。


「二度って言っても、クアルンの王族女性を招いた晩餐会で着ただけじゃない」


クアルンから同行している女官二名は、元々王太子の宮殿にいた女官だ。誰も舞がこのドレスを着たところなど見ていないのだから、気にする必要はないと思う。


「二度は二度だ。正妃の晩餐のドレスも新調できないなど……外部に漏れては私の恥だ」


他のドレスは日本で着たウェディングドレスとパーティドレスがあるが、それよりましだと判断したらしい。

舞は、結局自分の恥なのね、だったら出ない! と叫びそうになるのをグッと我慢した。

ミシュアル国王の首に手を回し、ニッコリ笑って尋ねる。


「ごちゃごちゃ言わないの。どうして出られるようになったのか、晩餐会で何をしたらいいのか、ちゃんと教えてよ。ね、アル」


軽く彼の頬に口づけると、ふたりを取り巻く空気がガラリと変わった。

舞は色々教えてもらうまでに、一時間ほど別の授業を受ける羽目になったのである。


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