龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】

「それが桜の本体?」


ガラス玉を拾い上げる圭吾さんに、悟くんが聞いた。


「そうだ」


「そんなに小さかったんだな」

悟くんはフウッと息を吐いた。

「霊力っていうか、想いが強すぎて、普通のやり方じゃ僕には止められなかった。死ぬかと思ったよ――あー、すっごい匂い。当分、桜餅食べたくない」


同感。


「二人とも、何でこんなに時間がかかったのさ?」


「今回は厄介な事になっていてね」


「これだよ」

要さんが胸ポケットからハンカチを取り出しながら言った。


ハンカチを広げると、ガラスのかけらのような物がいくつも乗っていた。


「俺達が一本桜の所に行った時、木は空っぽだった。気配を追って行くと、見つかるのは分離したかけらばかりで」


「そんな欠けた状態で、よくこの家に入り込めたね」


「うちの門の外にもいくつかかけらが落ちていたよ。並の樹霊なら砕けていたことだろう」

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