龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
「どこ?」

片岡先生がキョロキョロする。


「先生には見えないですよ」

美月が口を挟む。

「わたしにも見えないですけど。滝田先輩は『遠見(とおみ)』なんです」


「うーん……いいや。もう何を見聞きしても驚かない」


「相変わらず肝が据わってるね。男前」

片岡先生のお友達が笑った。


お友達は、総合病院の看護士さんだ。

道理で、どこかで見た顔だと思ったはず。


「この中で1番若いのは? アイ?」


圭吾さんに呼ばれて、アイちゃんが怖ず怖ずと前に出た。

圭吾さんはビニール袋の中の灰を升で掬い、アイちゃんに差し出した。


「これを持っていてくれ」


「でも……あたし、羽竜家の子じゃないし」


「君は松子さんの娘だろう? 君もれっきとした、僕が守るべき羽竜の子だ」


アイちゃんは耳まで真っ赤になりながら、圭吾さんから升を預かった。


圭吾さん達は袋に残った灰を木の根本に撒き、その上からポリタンクの水をかけた。

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