龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
3時間目~理想と現実

4月――新学期


「お願いね、面倒見てね」


わたしはペロをサークルに入れた後、和子さんに何度も念を押した。


「お任せ下さい。お帰りになるまでちゃんと面倒をみますよ」


羽竜本家の使用人を束ねている和子さんの厳格な顔が、少し緩んだ。


新学期が始まって、わたしは自分がいない間、ペロの世話をどうするかを決めなくてはならなくなった。

頼めば圭吾さんが見てくれるだろうけど、お仕事が忙しいだろうし、外出も多い。


「朝、母屋に連れてらっしゃい」

そう言ってくれたのは、貴子伯母様。

「清潔にして、少し遊んでやればいいのでしょう? 人がたくさんいるのですもの、大丈夫よ」


結果、ペロは保育園に通う子供よろしく母屋の居間でサークルに入れられる事になった。


「いい子にしてるのよ。すぐ帰って来るからね」


ペロはわたしを見上げてしっぽを振った。


「ほら、遅刻するよ」


圭吾さんがせき立てる。

< 49 / 191 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop