龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
4時間目~恋の教科書

痛っ! あ痛たたた


「また派手に擦りむいたわね」

彩名さんが、わたしの膝を確認しながら言った。

「どこでやったの?」


「バスから降りる時に、ステップを踏み外したみたいで、歩道に転がり落ちたの。近くにいた人がすぐに助け起こしてくれたけど、すっごく恥ずかしかった」


「危ないわね。気をつけなきゃダメよ。じゃあ、手の平も見せて」


手の方は赤くなっている程度だったけど、彩名さんは顔をしかめた。


「消毒するより、傷口を洗った方がいいわ」


「洗うんですか?」


「流水をかけて傷口についてる土を落とすのよ。いらっしゃい」


彩名さんは浴室でわたしの膝を洗ってくれた。


うっ うぎゃー


そっと洗ってもらったけど、思いの外痛い。


「圭吾さんがいなくてよかった」

わたしは涙目で言った。


圭吾さんは神社の寄り合いで外出中だ。

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