龍とわたしと裏庭で⑥【高3新学期編】
「珍しく要が渋って、言えなかった」


「言わなかったの?」

彩名さんが驚いたように言った。


「正確には『もう一年待とう』と言ってしまった」

圭吾さんはわたしの脚に頭を預けて、ポツリと言った。

「僕は間違っただろうか?」


圭吾さんは疲れていた。


責任という名の重圧に押し潰されそうに見えた。


わたしは圭吾さんの髪に指を滑らせた。

圭吾さんが気持ちよさそうに、目を閉じてため息をつく。


「正解なんてあるの? 数学の問題みたいに?」


わたしがそう言うと、圭吾さんは目を閉じたまま、乾いた笑い声をたてた。


「そんなモノがあるなら、知りたいね」


「じゃあ、間違ってるかどうかなんて分かんないじゃない」


「そうだね」


圭吾さんはムクッと起き上がって、コーヒーカップの中身を飲み干した。

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