雨が見ていた~Painful love~


――ひどい!ひどい!!ひどすぎる!!


私は夜の街をずぶ濡れになりながら、
一人プリプリ怒って歩き出す。



キョウちゃんは、


自分勝手
ワガママ
自己中
唯我独尊


絵にかいたような最低男!!




俺様なんだか何様なんだかしらないけど、人としてどうなの!?




レイプ魔のくせに!!
私の心の傷をいい気味だなんて笑う人、本当に信じられない!!



許さない。
絶対に絶対に許さないんだから!!!



かかとの折れたヒールを手にもって、プンプン怒りながら裸足で歩いていると



♪Trrr,Trrr…♪



鞄の中で携帯が鳴る。




その発信者の名前は…桐谷仁。
私の兄だ。




はぁ…、今はなんだか気まずいなぁ……




そう思いながらも、仁くんが私に電話をしてくるときは大抵が仕事の電話。





今出ないと、後々めんどくさくなりそうだな……




そう思って


「はい、美織です。」


何事もなかったかのように電話に出ると


「あ、美織??
ちょっとスケジュールのことで相談したいんだけど…今どこ??」


電話の向こうでは、仁くんの柔らかで落ち着いた声が響く。






その声に少し癒されながら


「あ…ゴメン、今、外なんだ。
帰ってから電話してもいい??」


そう答えると


「うーん、できれば今すぐがいいんだよね。直近の撮影日と裁判の日がブッキングしちゃいそうだから。」


「え、えぇ!?」


仁くんはこともなげに、そんな爆弾を私に投げる。


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