雨が見ていた~Painful love~

まったく……
わが兄ながら、仁くんのマイペースさにはビックリしてしまう。



仁くんには他の人にはない、人を惹きつけるオーラみたいなものがあって、選ばれた者にしか持てない華があるのに、彼は芸能活動に本腰を入れてくれない。




“あくまでも息抜き”




仁くんはそう言って憚(ハバカ)らない。





自分にとって大事なのは弁護士としての日常で、芸能人“桐谷仁”はあくまでもプラスアルファなのだそうだ。





私はいつも『もったいない!』って言ってるんだけど…仁くん自身もパパも“やりたくないことはやりたくない”って子どもみたいな言い分を貫き通す。







仁くんなら頭もいいし、モデルだけじゃなく、いろんな仕事ができると思うのに……。(実際そういうオファーは山のようにある。)



本人はバイト感覚だから、全然先に進まないんだよなぁ。






ハァ…とため息を吐きながら
ガードレールに腰かけてそんなことを考えていると




「お待たせ~。」




私の目の前に一台の白いBMWが止まる。





「あれ。早かったんだね。」


「うん。ほんとに近くにいたから。」





その車の持ち主は…仁くん。
私の愛する、困ったお兄ちゃんだ。



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