ナツメ
「じゃあ、お願いしないと」
「お願い?」
「そうだよ。抱きしめてくださいって言ってみな」
ゆっくりと振り向く。
ナツメの顔は笑っていた。
唇の端っこを持ちあげて、意地悪い顔で。
言えない。
わたしは今まで誰かにお願いをしたことがない。
神様には何度もお願いしてみた。
けれど、ただの一度だって神様はお願いを聞いてくれなかった。
ナツメは神様じゃないけど、今のわたしにとっては同じようなものだ。
なにかを人にお願いすること。
それは酷く情けないことのように思えたし、お願いしてもどうせ聞いてはくれないと端から諦めていた節もある。
「お願い?」
「そうだよ。抱きしめてくださいって言ってみな」
ゆっくりと振り向く。
ナツメの顔は笑っていた。
唇の端っこを持ちあげて、意地悪い顔で。
言えない。
わたしは今まで誰かにお願いをしたことがない。
神様には何度もお願いしてみた。
けれど、ただの一度だって神様はお願いを聞いてくれなかった。
ナツメは神様じゃないけど、今のわたしにとっては同じようなものだ。
なにかを人にお願いすること。
それは酷く情けないことのように思えたし、お願いしてもどうせ聞いてはくれないと端から諦めていた節もある。