本気の恋の始め方

「えっと……千野君?」



千野千早(チノチハヤ)

彼のことは、名前と、それともっともらしくささやかれているいくつかの噂程度しか知らない。

だから、ドキドキどころじゃない。

いきなりそんなこと言うなんて、いたずらだと思った。


私と二人で飲みたいなんて意味不明。

だって私、年上だよ?

大卒の彼から見たら、二つも上。


おまけに出会って一ヶ月でこんなふうにお誘いを受けるほど、美貌には恵まれてるとは到底言えない、ごく平凡な女だ。


ボーイッシュなショートヘア。

社会人マナーとして最低限の化粧。


いわゆる男受けとは縁遠い、そういうタイプだって二十歳もすぎれば、自分のことは自分が一番わかってる。




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