バイナリー・ハート 番外編

(1)



 結衣の耳元に顔を近付け、かすれた声でランシュが囁く。


「ねぇ、ユイ。感じる?」
「ふふっ」


 耳と首筋にかかる吐息がくすぐったくて、結衣は笑いなから首をすくめた。


「先生と比べて、どう?」
「同じよ。何も変わらないわ」
「じゃあ、こっちは?」


 ランシュは結衣の手を取り、自分の身体に当てる。
 手の平に伝わる、温もりと鼓動。


「一緒よ」
「これで、誰にもバレないね」


 そう言ってランシュは、ニッコリ笑った。

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