バイナリー・ハート 番外編


 男には分からない事?
 ランシュは咄嗟に、隣にいるロイド先生に尋ねた。


「先生は分かりますか?」
「ノーコメント。オレは知っているからな。教えたらユイに怒られる」


 ランシュがユイと話している間に、黙々とケーキを食べ続けていた先生は、ワンホール最後の一切れを口に放り込みながら、涼しい顔でそう言った。

 先生はユイを溺愛している。
 元々は強引なくせに、仕事が忙しいとかやむを得ない事情を除いては、決してユイの機嫌を損ねる事はしない。
 追及しても教えてはくれないだろう。

 何食わぬ顔で、ユイとランシュに切り分けられた残りのケーキを引き寄せる先生を横目に見ながら、ランシュは途方に暮れる。

 一人置いてきぼりを食らったランシュの様子に、ユイはプッと吹き出しながら提案した。


「気になるなら、お母さんに直接訊いてみれば?」
「え……いいのかな」

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