バイナリー・ハート 番外編
5.甘い強要


 うるんだ瞳で見つめる視界が、ぼやけて歪む。
 ゆうべから熱が上がり始め、ランシュは朝から寝込んでいた。

 ベッドを見渡すように天井の片隅に取り付けられた、監視カメラをぼんやり見つめる。

 不完全な体細胞クローンのランシュは生まれつき病弱で、いつ寿命が尽きるとも限らない。

 部屋の中には、いつくかの監視カメラが取り付けられ、常に容態をチェックされていた。

 先ほど医師がやってきて薬を投与していったが、あまり症状が改善されたような気がしない。

 側の机に広げたままになっている、作りかけのロボットを忌々しげに見つめる。
 今日完成したら、ロイド先生に見てもらおうと思っていたのに。

 思い通りにならない弱い身体に舌打ちしつつ寝返りを打った時、部屋の扉がノックされた。

 ランシュが返事をするより先に扉が開き、フェティが顔を覗かせた。

 こんな風にフェティが、こそこそとランシュの部屋にやってくる理由はいつも決まっている。

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