青空にさよなら




あとあと、お医者さんとあおちゃんのお母さんが、事故と友達……つまりは僕を失ったというショックで、事故前後の記憶と僕と過ごした記憶が全部なくしてしまったと話しているのを聞いた。


あおちゃんは、僕の最初で最期の恩返しのおかげもあって、無事生きていた。


でも、それと引き換えにするように、僕のことを完全に忘れてしまっていた。


僕のことを覚えてくれていたら、姿が見えずともどうにかして想いを伝えることができたかもしれない。


でも、それ以前に、あおちゃんの中で“碧”という存在が消えてしまった。


これではもう、どうすることもできない。


このまま、未練のせいで成仏することも叶わず、この世で曖昧な存在で居続けるしかないんだ。


そんな……あんまりだ……。


ふらふらと川へ戻ってくると、僕はそのまま土手に寝転がる。


青々とした空を、ゆっくり流れていく白い雲をぼんやりと眺める。


「このまま……好きな人に忘れられたまま、永遠にここで独りぼっち……か」


そう思った時、頭の中で、生前にあおちゃんに言われたとある言葉がよみがえった。



“碧はひとりじゃないから。あたしがいるから”



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