樹海を泳ぐイルカ
僕は今1年前の僕が思い描いていた場所とは、程遠い世界にいる。
桜が満開になったころ母親の期待に応えて僕は「有名私立高校」に入学した。
中学校生活を捨てた僕にとって此処は希望で溢れていた。
僕の誇りとなる高校の象徴、校歌。
50代後半のベテラン教師の「入学おめでとう」の声。
クラスメイトの「よろしくな」の笑顔。
目に映る全てのものが新鮮で、眩しかった。
だけどそれは、まやかしで僕は一ヶ月後その全てを失うことになる。