樹海を泳ぐイルカ
ふと目に映った机には今から1年前くらいの僕がいた。

“遊ぶ”という行為を捨てて問題集を貪ったあの頃の僕。


友達はいなかった。

だけどそれを寂しいと思ったことはなかったんだ。


難関私立進学校に合格するという期待を背負い、目の前の壁に登ることに必死だったから。


そして、それが僕のプライドであり存在理由だと信じていた。




今思えば
寂しい、と気付けなかったのかもしれない。

自分の気持ちを見つめる余裕がなかった、と言ってもいい。


そんな僕をクラスメイトは白い目でみつめていた。
宇宙人のように自分たちとは違う存在だというレッテルを貼られた。


そしてどんどん孤立していった。


だけど僕の未来は輝いていると信じてやまなかった。

「ガリ勉」だと馬鹿にされても、みんなを見返すほどの楽しい学校ライフを送ってやるんだと……根拠のない希望があったから。





あの頃の僕は今の僕を知らない。




急に全身が悲鳴をあげた。


僕は慌てて堅く目を閉じて、布団のなかに潜り込んだ。
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