樹海を泳ぐイルカ
第6章 始まりの合図
次の日、僕は授業を放棄して図書室にむかった。
授業中の図書室はガランとしていて人ひとりいない。

おかげで優雅に使えるかわりに冷房もきいていない。

微かに開いた窓から、蝉の声が痛いくらいにきこえる。

何千、何万匹の蝉の声。

それが余計に暑さをかきたてた。

流れてくる汗をぬぐいながら「生物図鑑」を手当たり次第に本棚から抜き出してページをめくる。

僕の周りに次々とあたりに生き物図鑑が散乱していく。

イルカについて書かれてあるページだけを貪った。


名前と種類、生息地域、生態……。


案外知らないことが多い。


まぁ僕が知っていたイルカの知識は哺乳類で泳ぎがうまい、それくらいだ。


説明の横に載ってある写真におさめられた2匹のイルカは絡み合うようにして海を漂っていた。
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