学園スパイラル-女医の襲撃-

 そうと決まればさっそく──とばかりに放課後、志保は匠の家を訪ねた。

「……」

 そこは学園から歩いて10分ほどだろうか、住宅街の路地に足を向ける。

『バルトグラス』と書かれた看板を見下ろし、品の良い木の扉を見つめた。

 この時間はまだ準備中なのか、扉は固く閉ざされている。

 来たからには少しでも彼の内情を知らなければ……とは思いつつ、なかなかドアを叩けずにいた。

「うちにご用かしら?」

 上品な女性の声が聞こえ振り返る。

 すらりとした体型に整った目鼻立ち、背中に流した黒髪は艶を帯びどこからどう見ても「美女」と呼ぶに相応しい人物だった。
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