学園スパイラル-女医の襲撃-

 志保は、まだ開店前の店内に促されカウンターに腰を落とした。

「どうぞ」

「あ、どうも」

 差し出されたグラスに会釈する。

「少しの怪我は仕方ありませんわ、体術の稽古ですもの」

「し、しかし。安全なんですか?」

「主人はしっかり安全性を確認したうえで稽古をつけておりますわ。それに、多少の痛みを感じなければ精神の鍛錬にはなりませんもの」

 うっ、ごもっともな意見だ。

「しつけと体罰と稽古は似ているようでまったく異なるものですわ。そもそも稽古ではないものを匠が認めたりしませんもの」

「!」

 母親は息子に絶対の信頼を寄せているようだ。
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