学園スパイラル-女医の襲撃-
 私立、尾世ヶ瀬(およがせ)学園──マンモス校という訳でもなく、十字型の校舎が珍しい程度で学力は全国平均よりもやや上といったくらいだ。

 その、平均よりもやや綺麗だと思える南 志保がこの学園に来てどうしても許せない存在がいた。

 それは周防 匠(すおう たくみ)──17歳の2年生。

 背中までの髪を後ろに束ね、切れ長の瞳は優しげで整った顔立ちはハンサムというよりも美形といえた。

 この学園でトップの成績を誇っている生徒だが、その天真爛漫というか自由奔放な傍若無人振りに志保はいつも頭を悩ませていた。

 夏の終わりにも、学園の寮で盛大な花火を打ち上げて騒ぎを起こしている。

 そんな生徒を、どうして処罰しないんだろう。

 志保は、腹立たしげに思いながら吊り上がった目をさらに引っ張るように口を引き結んだ。

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