学園スパイラル-女医の襲撃-

「ほう、詐欺にね」

 心地よい音量のクラシックを耳にしながら匠は、関心するように声を上げる。

「ぼく、佐々木さんにあんな風に言われて腹が立って」

「そりゃあまだ一ヶ月ですから、半人前と言われるのは当然でしょう」

「解ってる。でも、お前にはまだ石のことなんて解らないって言われて……」

 そんなとき、ふと声をかけられた石材業者の話に乗ってしまった。

「値打ちのある石を渡せば、ぼくも認めてもらえるかもって思って」

「認めてもらうために必要なのは、人としての正しくしっかりした言動ですよ」

 そこを固めてから実績を積んでいくのです……と匠の静かな言葉に、喉を詰まらせる。
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