アネモネの丘
「……おーっと、白馬に乗った王子様登場?」
 赤髪の人がそう言って、両手を上に挙げた。この人の手じゃない……?

「……え?」

 赤髪の人に掴まれたと思っていた手は違う人の手だった。私はその手の人に引かれ、赤髪の人から離された。助かった。

「彼女、嫌がってるだろ?」
「邪魔すんなよー」
「全く……人の事をもっと考えろ」

 
 助けてくれた人は赤髪の人から離れてテラスに私を引いていく。後ろ姿をみると、綺麗な金色の髪。小さい頃絵本で読んだ王子様のようだとふと思った。別に王子様に憧れていたわけではないけど、浮世離れした場のせいか柄にもなくときめいてしまった。
 金髪の人は私をテラスの椅子に座らせると、飲み物を持ってきてくれた。すごく優しい人だ。

「悪かった。あいつは俺の連れなんだ……あいつに代わって謝らせてくれ」
「いえ、ちょっと戸惑ってしまっただけなんです。こういう所に慣れてなくて」

 皆会場内で踊ったり話していてテラスにはほとんど人はいない。密度少なくて落ち着く。でも、もう帰りたい。宿屋の手伝いしに帰りたい……。
 あの煌びやかな会場内に戻りたくない。
 私の居場所じゃない。

「そうか……それは辛いな。俺も昔はこういう場は嫌いだったが……何回か経験するうちに慣れた。そういうものだ」
「そういうものですか?」

 私には絶対無理な気がするけど……何すればいいかわからないし。

「男は女性に話しかけるのがマナーだから女性は得だぞ?話しかけられたら失礼にならないくらいの相槌を打てばいいだけだからな」
「私、失礼なことしてしまいました……」

 多分、この金髪の人はフォローしてくれてるんだと思う。けど、ちょっと凹んだ。私、すごい失礼なことしたって事か……。まあ、初めてだから仕方ないって思おう。
 ポジティブに考えないと。今の私は弱っているからかネガティブすぎる。
 
「……あいつは例外としていい。失礼な対応をしたんだからな。時には引くのも男のマナーだ」
「男の人って大変なんですね……」

 社交界にでる男の人って大変だ……。って、一般市民がこんな舞踏会に参加することなんてこの仮面舞踏会以外にはあまりないことだ。
 それなら、この男の人はそれなりの身分の人ってこと?いくら身分を気にしない仮面舞踏会とはいえ、実際に身分が高そうな他人と話すことはちょっと気が引ける。




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