アネモネの丘

 ルチアの悲しそうな顔を見たら嫌だなんて言えない……。

「わかった。エマさんに相談してみる。エマさんが無理っていったら無理だか
らね」

 エマさんの事だから反対はしないと思うけど。快く行かせてくれるよ……。

「よし!」
「王族がよしってガッツポーズしないでよ……」

 見た目は王族なのに他は全然王族っぽくないよ……ルチア。
 そんなルチアが大好きだけど!

「今年は去年参加できなかったお兄様が参加するから絶対去年より人が多いと思う」
「そうなんだ?噂ってすごいもんね」

 私が言うと、ルチアは変な表情をした。なんというか……変なものでも見る目。なんで?参加するっていうのが噂でまわってるんじゃないの?

「花楓、前々から聞いてみたいと思ってたことがあったから聞いてもいい?」

 私が頷くと、ルチアは私の耳元に口を寄せた。ひそひそ話しなきゃいけないこと?

「もしかして、お兄様に全然興味無いの?」
「うん、別に」

 周りの女の子みたいにキャーキャー言うほど興味はない。顔は何となく見たことあるけじっくり見てないし。ルチアの兄なんだからそれは美形さんだろうとは思うけど。王子だからって興味が湧くわけじゃないもんね。

 私の言葉にルチアは微笑んだ。

「花楓だからそんなことはないと思ってたけど、花楓がお兄様目当てで私と仲良くしてたらどうしようかと思った」
「目当てって……もう付き合い二年になるのに私そんなこと言わなかったよ!」
「ごめんね、花楓。でも、想像通りで安心した。やっぱり花楓は花楓ね」

 ちょっとショックなんですけど。でも、ルチアのごめんねオーラを感じるから許すけど。


 実は恋人つくるつもりもないんだけどな。ましてや結婚なんて全然考えてない。
 突然この世界に来たんだから、もしかしたら突然元の世界に帰ってしまうこともあるかもしれないから。そんなことは無いと思うけど、もしかしたら……。


 時々、この国の人との価値観のちょっとした違いが私はこの国の人じゃないんだと感じさせる。ルチアに対しての対応だってそう。私はこの世界の人になり切れていないんだって。ルチアがいくらフレンドリーだからって私みたいにルチアに接する人はほとんどいない。


 私がこのことを悩んでいる限り、私はこの世界の住人になりきれないんだと思ってる。



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