君が想い出になる前に




「あ、麻央。」






(えぇ!呼び捨て…!?)



「沖田くん。こんばんわ。」

少し距離を置いた挨拶をした。







「あ、ごめん。
いつも惣右介が麻央って呼ぶから、つい」





「いいよ。麻央で…



じゃあまた学校で。」




「あ、待って。
俺ももう出るし」





(え?…一緒に帰るの?)

なっちゃんに怖がらなくていいと言われたけど、
やっぱり正直怖いし苦手だった。






なのに何故か、
コンビニを出て並んで歩いている。




「沖田くん、あんまり学校来ないけど
先生に言われないの?」






無言が辛くて
話しかけてみた。









「森はうるせーよ、
毎日電話してくるみたいだし」







「中村学園の先生に?」






「うん。あ、知ってたんだ」







「うん。なっちゃんに聞いてーー」

(あぁ、もしかしてまずかったかな
怒られるかな…)





ビクビクしながら顔をあげると






「奈津さー、世話焼きおばさんだから(笑)
俺のこと怖がんなくていいーとか言われたっしょ?」






そう言って彼は
今まで怖いと感じたことなんてすっかり
忘れてしまうくらい




とっても優しい顔をして笑ったーー









あまりに驚いたせいか
一瞬時が止まった気がした。
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