威鶴のmemory


彼は家出少年らしく、今は家がないという。

だからBOMBの事務所の近くのマンションの一室を、彼に与えた。


彼はBOMBの中でもトップ5に入る素晴らしい能力の持ち主だった。


なのに……。


「ねぇ、なんでバイトなの?本契約を結べば、もっと報酬が貰えるのよ?」

「いらない」

「そうだわ、高校へ行けばいいのよ。あなたまだ18歳くらいなんでしょう?ここでなら学費も払えるし、日曜日しか仕事を回さなければ──」

「いらない、面倒だ」

「……行きたくないの?」

「特に行きたいとは思わない」


威鶴は最初、少し生意気で、子供っぽい所も見え隠れしていて……そして、残酷な瞳を向けていた。

全てを拒絶するような瞳。


それからしばらくの間、威鶴はウチで働いた。

パートナーは当時私の担当下にいた女の子のバイト。

一緒に仕事をさせているうちに、いつの間にか鋭かった瞳が柔らかくなり、性格も生意気じゃなくなり、少し大人になった。


よかった……と安心していたのも束の間、今度は威鶴が男の子を拾って来た。

< 88 / 111 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop