W-アイ ~君が一番に見たいもの~ 【完】

ある晩、いつものカーテンを揺らす合図と同時にオッサンが話しかけてきた。

「お前さ、この包帯が取れた時、一番最初に見たいもんはなんだ?」

「あん?考えたこともねえよ。オッサンは何か見たいもんでもあるのかよ」


――どうせエロ本かなんかだろうけどよ。


俺は、お返しのようにカーテンをド突くと、付き合い程度のつもりで訊き返してやる。

しばらくオッサンの返事は無かった。
とくに聞きたくもねえ、まさにどうでもいい内容ではあったが、見えやしないのにお袋が置いていった、枕元の目覚まし時計のチクタク感が妙に煩わしく、「なんか答えろよ」と、カーテンをもう一度突いている俺がいた。  


すると。
 

「俺はさあ」


と、オッサンの声。


チクタク感から解放された俺は、オッサンの声に最大限の神経を集中させた。


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