マンゴーにはなれそうもない
twelfth, 男は黙って女のウソを許せ
「・・そんな事があってからずっと、
入退院を繰り返してるのよ。痛んでた
トコが次々とボロを出すって云うか?」

「ああ・・・。」


何となく解る・・酒豪だし、
昔はかなり無茶をしてたらしいし、
いつも何か薬を飲んでいたから・・。



「彼が退院してホッとしたら今度は
私が倒れちゃってね・・病院行きよ。」

「どこか・・悪かったんですか?」


煙草を消した灰皿を隅に移動させた
ほんの一瞬、躊躇う様な間があった。


「子宮がん・・全部取っちゃったの。」


あたしは微妙に肩を揺らしていた。

そして大きくなりそうな溜息を
彼女に悟られない様、少しづつ吐き出してる。


「・・・じゃあ・・。」

「ええ、もう子供はダメね・・。」


以前、洸汰から・・彼女が
不妊治療を受けているって話を聞いてた。

だからこそあたしは・・
あの時、彼にああ云ったのである。

瑞穂はまだ29だ、
若いうちのがんは進みが速い。
気が着いた時には・・
残せない程になっていたのだろう。

言葉も出ないでいると、
また新しいビールの栓を抜き
あたしのコップに注ぎ始めた。


「彼は、養子でも取ればいいって
簡単に言うけど・・現実そうも行かない。」

「職業柄・・?」

「ええ・・仮に出来たとしても、
私は嫌。彼の遺伝子を残したいのよ。」


目がものを言うかに・・瑞穂は
真っ直ぐとあたしの目を見つめた。


「まさか・・それが用件?」

「ええ、そう・・。
私、貴方だったら許せると思ったの。」


彼女が望む、
遺伝子を残す為の最終手段・・。

Surrogacy・・・、代理出産であろう。


国は認めていないが
全く禁止されている訳ではない。

非公式なものを含めれば
日本でも実例は結構あるらしいが・・。



「どうしても彼の子が欲しいのよ・・。」

「瑞穂さん・・・。」



テーブルを挟んで、詰める様に
上体を傾ける彼女をあたしは・・
色んな想いで見つめ返して言葉を出した。


「・・・・洸汰さんには相談せずに?」

「・・・・・・・。」






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