木犀草が告げること


 兄貴はとても美人だ。線が細くて、色が白くて。髪も艶やか。

 そんな兄貴は、女に間違えられるのが死ぬほど嫌い。

「黙ってねえで何か言ったらどう、」

 浪人の言葉が中途半端なところで途切れた。
 兄が浪人の腕を切りつけたからだ。
 切り込みは浅いようで、鮮血が飛び出す程度。
 繋がったままでよかったね、ご愁傷様。

 男の手は、あたしの胸倉から離れていった。
 反動でしりもちをつきそうになったけれど、兄貴が支えてくれた。

「三つ、訂正させたいことがある」

 そういって、兄貴は刀を構えた。

「まず、沖田総司は俺だ」

 兄貴はすぐ近くに居た他の浪士に切りかかる。

「二つ、俺は女じゃない」

 浪士達はうめき声をあげて、どんどん倒れていく。
 踊るように剣を振るう姿はいつ見ても綺麗。
 鮮血の飛び交う中で、少し狂気めいた踊り。

「三つ、俺の妹に手を出す奴は、誰であろうとゆるさねえよ」

 気づけば、立っているのはあたしと兄貴だけだった。


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