由良さんが呼んでますので





元々、彼の弱味を握るはずだったのに。確かに握ったけれど、もしかしたら私にとっての弱味は、彼になったのかもしれない



ああ、厄介だ




「はい」

「だ、ダメですよ!由良さん細っこいから倒れちゃいます!」

「大丈夫ですよ」

「だぁーめです!メ!!」




人間の、感情というモノは


少し構ってもらうだけで、声を掛けて貰うだけで嬉しくなってしまう。私はいつから、こんなに単純な人間になっていたのだろう



・・・・・ああ、もしかしたら最初からなのかもしれない



なんて、いま気づいてみたり




「俺の、パン1個あげますっ」

「そお?」

「食べてくださいぃー」

「・・・・・ありがとう」



拗ねた顔をしながら、私の手元に彼が大量に買ったパンの1つを押しつける。やっぱり、優しいなあ



ダメだな、手放せないや




だって私、嬉しいもん




「どうですか?おいしい?」



ビリ、とナイロンに包まれた菓子パンを取り出して口に含めば、彼は不安そうな顔をして、いつかの日みたいに瞳を揺らしながら私を見る


そんなことしなくたって、大丈夫なのに



よっぽど彼は、人間というもので辛い思いをしてきたのだろう



これも、私が言えたことではない




「美味しい、ですよ」

「やっった!」




子供みたいにはしゃぐ彼を何回も見た



だからやっぱり私は、彼を幸せにしてあげたいと思う




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