だから君に恋をしたんだ。

とにかく広い廊下を歩く。
大理石で出来た廊下は、鏡みたいに自分達の姿が写っている。
窓ガラスも、傷一つない物だった。

歩いても歩いても、いっこうに着く気配がない。

「ねぇ、職員室ってどこにあるか分かるの？」

「職員玄関を入ってすぐって言ってたから、もうすぐよ。多分。」

「本当？ 」

迷ったよね。完璧に迷ったよね。
ただでさえ広いのに…生徒に聞くしかないのかな…。

「あ、祐介じゃん！」

背後から聞いたことがあるこの声。
もしかして…

「丞！」

「堀内君！」

「千草さんとお母さん、こんにちは。」

「丞君もこの学校だったんだ！」

「うん。俺は幼稚部から通ってますよ！」

全体的に小柄な男の子。制服を上手く着崩して、首にはヘッドフォンを掛けている。

丞君とは何回も一緒に仕事をしてお世話になっている。
鎌を主とする死神だけど、丞君は弓を使う。

弓って、あまり仕事をするのに効率が良いとは思わないんだけどな…。

「なんで麻木一家がこちらに？」

「監理局の命令よ。こっちが大変だから頼むって」

「なるほど。学園長は同業者だし位が高いし。ここは最適かもしれないな。」

杉村さんって位が高いんだ…。
知らなかった。

「それはそうと丞、職員室ってどこだか解る？」

「職員室？まだ行ってないのか。」

「いや、迷っちまって…な」

「そうなのか。ってか、職員室ってここからが一番遠いんだけど…」

嘘…また、あの量を歩くの…。
足が棒になる…。