お腹が空きました。





歩いて帰りませんか?


そう切り出したのは紗耶の方で。


まぁ、近いしな。と杉崎は了承し、二人は酔いを冷ますように並んでとぼとぼ歩き始めた。


上を見上げると優しい月が出ている。


自分達の柔らかい影をゆっくり追いながら紗耶はへへへと楽しそうに笑った。


「なんだ?あれだけで酔ったのか?」


「杉崎さんが強すぎるんですよ。私結構強い方ですって。ほら、そんなに赤くないでしょ?」

そういいながら自分の頬を突つく紗耶に、杉崎はうーんと唸った。


「?」


「餅みてぇ。」


「失礼な!」


ケタケタ笑いながら紗耶は何気なく杉崎の腕を見つめた。

大きな手が無防備にぶら下がっている。


いつも大好きなケーキを作ってくれる手。


器用な手。


そんな杉崎の手の甲をじっと見つめながら紗耶は思ってしまった。





…手、握りたいな。




「って何考えてんの私…っ‼」


「は?」


突然頭を抱えて叫んだ紗耶に杉崎は思いっきり怪訝な顔をした。


「すすすすみませんっ!なんでもありません!」


「なんだよ、言えよ。」


「いえいえお気になさらず‼」


眉間にシワを寄せながら杉崎は紗耶の方に体ごと向いた。


「なんか考えてたんだろ?気になるから言…」


ぐうううううー。


「…。」


紗耶は立ち止まったまま自分の情けない腹を押さえた。

このタイミングで鳴るか私の腹。と紗耶は前かがみで半泣きになる。




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