お腹が空きました。



紗耶はキーボードを激しく鳴らしながら欲を振り払う。




…昨日あれだけ決意したじゃないか。




「あれ?室内(むろうち)さん、今日おやつ食べてないの?めっずらしー。」


後ろからコーヒー片手に隣の部署の牛野が声をかけてきた。


ブルーのネクタイが今日も決まっている。


「…今日から始めました。」


「なに?ダイエット?」


「そーです。」


パソコンを必死に睨んだまま紗耶は答えた。


ちょっとでもキーボードから手を離すととたんに財布を引っつかんで走ってしまいそうになるからだ。


そんな紗耶に牛野が笑いながらため息をつく。


「そんなの必要ないのにねぇ。若い女の子ってなんでそんなにダイエットしたがるのかな。」


そう呟きながら牛野は自分のデスクに戻っていった。


…必要ないだって?


紗耶は怪訝な顔してチラリと消えていった先輩の背中を見る。







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