お腹が空きました。


ニコニコしながら正方形に切り分けて行く紗耶を目線だけでチラリと確認し、杉崎は耐熱性の小さいボールに生クリームを注いだ。


「それ、何をしているんですか?」

キッチンの向こう側からひょこっと顔を出し、紗耶が訊ねる。

「あ?ああ、少し温めておくんだよ。生クリーム200ml、バター20gっと。これでよし。」


ふーん、と、頷きながら紗耶はちょきちょき手元を動かした。

「牛乳200mlに、砂糖140g。水あめ10gと、はちみつ20gっと。OK。」

嬉々とした表情で杉崎は分量を呟きながらそれらを鍋に投じて行く。


「杉崎さん…分量計るの早いですね。」


キッチン台の上に広げられた計量カップや計量スプーンやはかりを、無駄の無い動きで素早く使いこなす杉崎に紗耶はほぉーと口をまるくした。

「ケーキは焼かなかったが、これだけは慣れてんだ。…嫌だっつっても、これだけは。親父に死ぬほど手伝わされたからな。」

鍋をくるくる木べらで回しながら杉崎はくくっと苦笑いをした。

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