知らない闇と、骸




「本、すきなのか?」

先ほどの鬼騒動から早一時間。
遥か昔の物語を読んでいた私に、隠し扉を見つけたジロは問いかけた。


「嫌いなものの為に、これだけのものは使わないわ。」
湿気を嫌う本たちがの為に選んだ部屋。木の香りがほんのりと香る天井まで届く本棚。ふかふかの赤い絨毯。隙間無く詰められた世界中から集めた本たち。
一番近くにあった本を取り出し、表紙横を見る。
「これは八回読んでる。」
読み終えたときの日付と年齢が、表紙に書き込まれている。
「これは六回か・・・。うぇ、こんな分厚い本、一回すら読めねぇよ。」
ジロは『白色の掟』という本を見てそんなことを漏らした。
「暇だったからね。それに、知りたかったから。いろんなこと。」

あの時は、無心になりたくて。
ただ、無心になりたくて。
その時期が過ぎたら、突然すべてを知りたくなった。
その二つが今の私の土台を作っているといっても過言ではないくらいに。



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