幸せまでの距離

誰もいない砂浜。

晴れ渡る青い空と、真っ青な海。

地平線を染める波の音。

白くて青い、二人きりの時間。


海を眺め、リクはメイの両手をにぎりし めた。

「こわい夜は、手をにぎって一緒に眠 る。

嬉しい時も、抱きしめあって喜びを分か ち合う。

メイの心が血を流しそうになったら、俺 がそれを受け止める。

この命がある限り」

「うん…!」


リクとの関係を、精一杯守る。

メイは心に誓った。


《人の心に存在する土は、厳しい風を受 けると硬くなり、優しさをもらうと柔ら かくなる。

だから、私の土はまだ耕せる。

いつか、綺麗な花を咲かせる日のため に》

リクとの海水浴から帰るなり、メイは ノートに書き綴った。

《今、ここに生きていられることに感 謝。

嫌々生きてきた気でいたけど、私は何人 もの人に生かされてきたんだと知ったか ら。

まだ、生きたい。

生きて、今日のような幸せを感じたい》
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