恋の矢
「何だよ、不満なのか?」

 腕を押しのけられた友人の一人が、意外そうに言う。

 ヨワリの相手として挙がっているのは、彼の一つ下の幼馴染みだが、なかなか可愛らしい少女だ。
 幼馴染みだけにお互い気心も知れているし、良縁といえば良縁だろう。

「そういうんじゃないけど・・・・・・」



 ヨワリは少し照れたように唇を尖らせ、呟いた。
 幼馴染みに不満はない。
 だが何となく、この淡々とした流れのままに普通の人生を送るのが、不満といえば不満なのだ。

 何故かと問われたならば---

「ヨワリは、他の女を知らねぇからなぁ」

 仲間内でも一際大柄なトロケが、ヨワリの肩をばしばしと叩いて、豪快に笑った。

「うっうるさいって!」

 途端に真っ赤になって、ヨワリはその場を飛び出した。
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