赤い月 弍

「ゆくぞ、小鞠。」


もう用はないとばかりに踵を返すうさぎ。

これ以上触れてはならない。

これ以上踏み込んではならない。

根源的な恐怖を、本能が訴える。

だが、人間の本能は時代と共に衰えを見せているという。

野生の動物であれば本能で察知し、回避できるはずの危険を、人間は避けられない。

体面や見栄が本能を抑え込み、時に自ら危険を招く。

今回の場合も…


「か… 勝手に逃げてンじゃねーよ!!」


女生徒の一人が片手を振り上げる。

うさぎが肩越しに振り返る。

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