赤い月 弍
きっと それも 嘘

思っていたより時間がかかった。

病院で治療を終えた小鞠を家まで送り届け、法定速度をブっちぎって景時が帰り着くと、うさぎは薄暗くなった部屋の窓際に立ち、外を見ていた。
紫と藍色のグラデーションが美しい空には、まだぼんやりとした月が浮かんでいる。

とりあえず、三行半の手紙一枚で、出て行かれることはなかったようだ。


「ただいま。
小鞠ちゃんの足、骨には異常ないって。
ご両親にも説明して、ちゃんと謝ってきた。

ごめん。
俺のせいで…」


「そなたの責任ではあるまい。」


リビングのドアの前から一歩も動けず立ち尽くしたままの景時に、うさぎは鷹揚に声をかけたが、まだ顔を見せてくれない。

< 91 / 215 >

この作品をシェア

pagetop