夜籠もりの下弦は恋を知る
雅子は口元を綻(ホコロ)ばせつつも、思慮深い瞳で言葉を紡いだ。
「でも、少しわかる気もしますね。重衡様のお気持ち」
「え?」
「おそらく、そなたに心配をかけたくなかったのでしょう。己がもし次の戦で大将軍に任命され、負けたら…清盛様の怒りにふれ、流罪…最悪の場合、死罪にされるかもしれないなどと、目に入れても痛くないほど可愛がってらっしゃる北の方に、そうやすやすと言えるわけがありませぬ」
「雅子様…」
輔子はどう返そうか迷った。
だが、上手い言葉が見つからず、今一番知りたいことを尋ねていた。
「あの…それで維盛様は、本当に…」
「輔子殿、ご心配には及びませぬ。維盛様のことは一門皆で、清盛様に赦して下さるよう訴えていますから。だからそなたも、何も聞かなかったようにお振る舞いなさい。重衡様から教えていただくまで、この件については黙っているのですよ?」
「はい…」
不安げに瞳を揺らめかせながら、輔子は素直に頷いた。