Diva~見失った瞬間から~

「………え?」

でも、切ったはずの2本の小指はまだ

絡まったままで。


「歌音。」

今日だけで何回呼ばれたんだろう。

その、低い美声に。


瞬間。

絡まっていた小指は一瞬で離れて、

右手首を掴まれた。


そしてまた、

ぐいっと勢いよく引っ張られた。

視界が安定したと思えば、そこは

大好きな腕と胸と香りに包まれていた。


楓の瞳はとても綺麗で、目が離せない。

大好きな腕の中で、

私は楓の瞳を見つめた。


「クスッ。」

すると、

楓はまた口元に艶やかな笑みを溢し、

私はまたその表情に魅入った。


《チュッ》

一瞬。その音が私達の間で鳴り響いた。


あの日と同じように。

あ、でも、今日は少し違っていた。


「結婚出来ちゃう大人は、

頬にキスだけじゃあ物足りないよな。」

額同士がくっついて、

綺麗な顔がまた近づく。


そう。

17歳と18歳の私と楓は、

5歳と6歳の私と楓よりも、

大人で、大きくて。


キスをするのも、唇同士なんだ。




            ♯未来♯

             未来章 end
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