イズミの主義


わたしは慌てて席を立って階段に向かう




「泉ー」


機嫌悪く振り返ると



「かばん忘れてるけど?」



笑いをこらえながらわたしのかばんを手にとって見せつけてくる




もちろん自分の手を見ても



かばんはない



走って桐原のもとに駆け寄る



「返して」


なぜか返してくれない



「お持ちしますよ」


そう言ってスタスタと歩いていく



ちょ、ちょっと待ってよ!!




「これ持ってたら泉と帰れるんでしょ?」

振り返りざまに笑顔でこんなこと言われたら何にも言い返せない





「泉ってほんとはバカでしょ?」


「はい?」


「フツーの人は忘れねぇーよ?」


う゛ぅっ…



「それに男と二人っきりなのに寝る?」


別に二人きりじゃなかったし
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