ミルクの追憶





「……行かなきゃ、」


少女は走る。

長いブロンドの髪を振り乱して走る。

洋館は近づくほどに大きくなり、ヴァイオリンの音色も激しく速度を増していく。



「急がなきゃ!」


闇雲に少女は走った。

なぜか呼ばれている気がしたのだ。

音も彼女を急き立てるかのように哀しく闇夜に響き渡る。

門をくぐり、古びた扉を目の前にして少しも臆することなく少女は中へ入って行った。





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