先生に会いたい


風邪を引いても、まったく表に出さなかった先生。

私と同じタイミングで風邪を引いたとき、私にだけ弱音吐いてくれたね。

昼休みに教室で2人になったとき、『桜…やべぇ。倒れそう…。』なんて言って、私にもたれてきたっけ。

思わず、先生の頭撫でちゃったよ。


そんな風に弱音吐ける生徒、今先生の近くにいる?

頑張り屋の先生だから、心配だよ…。


でも、疲れた先生を1番癒せるのは、私ではなく、生徒でもなく、先生の家族。

先生の奥さん。


先生は私のことを女としても見てくれてない。


ただの生徒。

よくて、かわいい生徒。


もう、卒業したから生徒としても思ってくれてないかもしれないね。



2人で撮った写真を見るたび、涙が出る。

何度この頃に戻りたいと思っただろう。


この写真の中の私は、自分がその後こんなに苦しむことを知らない。



悲しくて、苦しくて、切なくて、毎晩枕を濡らした。

前に進もうと思って聴いた失恋ソングは、余計先生を思い出させた。



『これから先も、ずっと桜が俺の1番の生徒だから』


卒業式に、私を抱きしめてそう言ってくれた先生。

この言葉は何よりも宝物。


でも、時間が経った今、あの言葉は出任せだったんじゃないかって思ってしまうんだ。



これからまだまだ教師人生が長かろう先生。

たくさんの生徒と出会っていく中で、ずっと私が1番だなんてありえないよね。


あの言葉は、きっとその時の先生の優しさ。



< 104 / 241 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop