先生に会いたい




「ちょっと桜!?何、どうしたの!?」


向かったのは、くるみの教室。

泣きながらくるみに抱きついた。


「先生に……3人目の子供が生まれるってぇ……うう……」

「うそでしょ?本当?そんなの辛すぎるよ……。桜ぁ……」


周りの視線も気にせずに、くるみと抱き合って泣いた。



放課後、くるみがカラオケに連れて行ってくれた。

ストレス発散だって、嫌なこと全部吐き出せって言ってくれた。

私を元気付けようと、無理して失恋ソングばかり歌ってくれたくるみ。


ありがとう……くるみ。


「あのね、あたし思ったんだけど、先生の親バカっぷりって有名じゃん?そしたらさ、子供が出来たらみんなに話すはずでしょ?なのに話さなかったってことは、やっぱり桜のこと気にしてたんだと思うんだよね~」


歌うことにちょっぴり飽きてきた頃、くるみが私に言った。


「そうかなぁ……」

「そうだよ!きっと、桜が泣くと思ったんじゃないかな。きっと、それが先生の優しさだったんだよ!」


先生に子供ができたことを知っていた子に、その話をどこで知ったのかと聞くと、部活の顧問の先生から聞いたと言っていた。

その顧問の先生は、先生が無二の親友と言っていた、山口先生だった。


生徒には一切、子供ができたことを言わなかった先生。


言いたくてしょうがなかっただろうな……。



分かってあげられなくて、ごめんね。




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