俺と初めての恋愛をしよう
朝、目覚めると、寝顔の綺麗なその人が隣で寝ていた。
 今日子は、起こさないようにそっとベッドを抜け出す。
キッチンでお水を飲み、冷蔵庫を開ける。朝食の支度をしておこうと思ったが、先週買った食材は使いはたしていて、牛乳さえもなかった。
洗顔をして、着替えると、財布を持って買い物に出ることにした。
玄関の下駄箱の上に、後藤は鍵を置いている。黙って借りるのは少し躊躇したが、起こすのもかわいそうで、「部長借りますね」とささやき、そっと玄関を出た。
マンション近くのコンビニでパン、牛乳、ヨーグルトを買い、戻った。
鍵をあけると、パジャマのままの後藤が飛び出してきた。

「どこに行っていた!」

大きな声で問いただされ、玄関のドアに背を付け直立不動になってしまった。

「コ、コンビニに朝食を……」

今日子は、言い終わる前に引き寄せられる。

「いないから何処へ行ったのかと心配したんだぞ?ちゃんと起こせ」
「ごめんなさい。よく寝ていたから」
「ああ、もう!……怒鳴って悪かった。携帯も持たないで……何かあったらどうする」
「ごめんなさい」
「今日子、もうお前は一人じゃない。俺がそばにいることを忘れるな、いいか?」
「はい」

今日子は一人だった。誰かに頼ることを知らない。それではいけないのだと、後藤に気づかせてもらう。
本当に心配をしていた後藤から、安堵の溜息が聞こえた。

「もう、心配を掛けないようにします」
「何を言ってる。今日子はそのままでいいんだ。俺の問題だから」

両親もよく今日子を心配していた。今でもそうだと思う。
しかし、後藤とこうしていることで、今日子の将来の心配は多少なりとも無くなったのではないか、そう思った。
二人は今日子が買ってきた物で軽く朝食を済ます。

「今日子、今日は何処か行きたいところはあるか?」
「私は……部長と家でのんびりしたいです」

元々、外に出るのは好きじゃない。家の中で本を読んだりしているのが、子供のころから好きだったのだ。
今日子の買い物をした品々をまとめ、ふたりはまったりと、ゆったりと週末の一日を楽しんだ。

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