♥切なくてアブナイ△関係♥-短編-
運命の夏の日。-奏夜 side-


「……ごめん、奏夜君待った?」
「ううん。待ってないよ、大丈夫だったの?」
「うん、ちゃんと言えたよ」
「えらいえらい、いい子だ」

……ま、一部始終全部見てたんだけどね。
僕は心の中でほくそ笑む。

そしてあいつと同じように、僕は彼女の頭を撫でた。
彼女は一瞬身体をビクっと震わせたが、僕の顔を見て安心そうに微笑んだ。
ああ……その顔、その表情、その仕草――全てが愛おしくて堪らない。



あいつに出会ってから、僕はずっとあいつの全てを奪いたいと思っていた。
そして、今ここに僕の傍に、あいつにとっての全て――彼女がいる。
なんて幸せなんだ。
――そう、僕の計算どおりに事が進みすぎて、幸せなんだ。



あいつと同じ高校になってから僕の人生は狂った。
一位が当然だった僕だったが、
あいつのおかげでいつも二番手になってしまった。
勉強も運動も全部だ。
悔しかった。
当然、僕の家の中でも立場もどんどん悪くなった。

僕は有能でなければ、一番でなければ、誰にも見てもらえない。
振り向いてもらえない。価値がない。
だから焦った。だけど血の滲むような努力をしても、いつもあいつにちょっとの差で負けてしまう自分に嫌気が差した。
才能の問題であり、僕はこれ以上努力しても無駄だと思い知ったからだ。




だがある日の朝のことである。
俺はあいつと一緒に登校している彼女に目をつけた。
彼女を奪えば、あいつに勝てるかも……という考えを思いつき、僕は彼女に近づいた。
けれども彼女と接している内に段々と惹かれていく自分に気付いてしまった。

心の底から彼女が欲しいと思った。
彼女の「一番」になりたいと思った。

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