赤い狼 伍




「あら春ちゃんおはよーう。」


「「「おはようございます!!!」」」


「あ、と……、おはよう…。」



おれから普段着に着替えて大広間に行くと机の前に一列に並ぶ《藤山》の人達が目に入ってきて少し笑ってしまった。なんか、懐かしいな。



五年前もこんな風に並んで厳つい人達が「おはよう」と笑って言ってくれていたな。とふと、思い出す。


五年も経った《藤山》は内装や雰囲気が少しだけ変わってしまっているところもあるけれど、人が声を掛け合うところは変わっていない。


それは私が一番憧れていることでもあり、この《藤山》のいいところである。



ダーリンは組長だけどちゃんと組の皆に挨拶をするし、真理子ちゃんは組の皆にお母さんみたいな優しさを与える。私はそんな《藤山》が大好きだ。



と。



「稚春が帰ってきたお祝いに今日は祭りだー!」


「ええええぇええぇえ!!」



ご乱心なのかなんなのか分からないけどダーリンが急に叫んでビールの入ったジョッキを掲げた。

飲む気だ。この人、朝から飲む気だ。



陽気に「ほーら、皆も飲め飲めー!!か「いただきます言ってないですよ、組長!!」会話してるこの連中はなんなんだ。


唖然とせざるを得ない。そう思いながらダーリンの斜め右に座っている真理子ちゃんを見て限界まで開けていたと思われる目を更に開いた。



えー、ちょっと……、真理子ちゃん、それはないでしょう。




< 24 / 34 >

この作品をシェア

pagetop