令嬢と不良 ～天然お嬢様の危険な恋～

男の次は女の自己紹介が始まった。だが、俺はそんなものには全く興味はなく、ビールをちびちび飲みながら、テーブルにあったメニューを手に取り、それを見るともなく眺めていた。ああ、早く帰りてえ……


「吉田栞です。趣味は……ゴルフです」


不意にそんな言葉が俺の耳に飛び込んできた。正面の変な女が自己紹介したらしい。やけに早口でか細い声だった。遠くの席の奴には聞こえなかったんじゃねえか？

それにしても、趣味がゴルフだあ？

チッ、生意気な女だな。そもそも苗字が気に入らねえ。って、なんで俺は“吉田”が気に入らないんだっけかな？
ま、いいか。


吉田栞とかいう女は、誰とゴルフに行くのかと聞かれ、「家族や知り合いの方々とです」なんて、済ました声で答えやがった。ケッ、自慢かよ！


「ふん。金持ちか……」


思わず声に出しちまったが、構うもんか。