令嬢と不良 ~天然お嬢様の危険な恋~
ああ、私は今、キスしてるんだわ。パパ以外の男の人と……

男の人の唇って、思ってたより柔らかいのね。それに、温かいわ……って、ダメでしょ、私!


「いや!」


私は我に返り、松本さんの胸を力いっぱい押した。


「もう……松本さんのバカ!」


初めてのキスは、好きな人としたかったのに、松本さんのバカ!

ううん、もっとバカなのは私だ。松本さんは、たぶん私が避けられるようにわざとゆっくりお顔を近付けてくれたのに、どうして私は避けなかったの?

私のバカ!


「グスッ」


やだ、涙が出てきちゃった……


「お、おい……」


私は松本さんの横を通り抜け、駆け出した。ご挨拶もせずに。


「ごめんよ」


そんな松本さんの優しい言葉が、後ろから聞こえたような気がした。

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